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その4

株式の税金、こんな節税法はアリ?


最近、事実上破綻した企業の株式が節税のために買われている。この節税方法に関連するキーワードは、「みなし取得価額」と「タンス株券」。

みなし取得価額とは、上場株式等の譲渡益課税が平成15年から申告分離課税に一本化されるのにともなって導入されたもので、平成13年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式等を、平成15年1月1日から平成22年12月31日までに売却した場合、その株式の取得費を、実際の取得費と平成13年10月1日の終値の80%相当額のどちらか有利なほうを選択できるという特例が設けられている。この平成13年10月1日の終値の80%相当額のことをみなし取得価額と呼んでいる。

税法上は、譲渡益の計算の際に買ったときの値段が特定できない場合、譲渡価額の5%を取得費とすると決められている。つまり、どうやっても買った時期や値段を特定できない場合は、譲渡価額の5%が取得費となって、残りの95%が譲渡益とみなされてしまう可能性があるわけだ。

たとえば、ある株式を売却して、その代金が1000万円だった場合、買った値段を特定できなければ、譲渡価額の5%である50万円で買ったとみなされ、950万円が譲渡益として課税されてしまうことになる。みなし取得価額は、このようなケースを救済するために導入されたのである。

一方、タンス株券とは、証券会社には預けずに、自宅等で自ら保管している株券のことをいう。現在、このタンス株券を、取引している証券会社の特定口座に組み入れることが可能で、期限としては、平成16年12月31日までとされている。この期限までにタンス株券を証券会社に持参すれば、取得日や取得価額が記載された書類があるときは「実際の取得価額」で、一定の書類がないときは「みなし取得価額」で特定口座に入れることができるのだ。

さて、これらの制度と破綻企業の株式とがどのように関連しているのかというと、事実上破綻した企業の株式は、上場廃止に向けて株価が1円に限りなく近づいていく。この二束三文の株価とみなし取得価額との開きをうまく利用するのだ。

たとえば、2円とか3円のときに購入して、いったん株券を手元に取り寄せ、さも長期間手元に置いていたかのように装ってタンス株券として証券会社に預け入れれば、みなし取得価額を取得費にできる。その後すぐ2円とか3円で売却すれば、大幅な譲渡損を出したものとみなされ、他の上場株式等の譲渡益と通算できたり、平成15年から導入された譲渡損失の繰越控除の制度によって、翌年以降最大3年間、損失を繰り越せたりするわけだ。

現在、この節税対策の格好の対象となっているのが、7月14日に民事再生法の適用申請を行った日本コーリン(証券コード6872)。日本コーリンは、ジャスダック(店頭)上場銘柄だったが、翌7月15日から店頭管理銘柄となり、6ヵ月を限度に登録(上場)取り消しまで取引が継続されている。

実は、この日本コーリンの平成13年10月1日の終値は4900円。ということは、みなし取得価額は3920円。そして、9月3日時点の株価は15円なので、今すぐ1000株買って株券を引き出し、再度タンス株券として預け入れ、株価が同程度のときに売却できれば、譲渡益の計算上は3920円で1000株買い、15円程度で売却したことになる。計算上の譲渡損は約391万円!

事実上の破綻が決まってから1ヵ月半以上も経過しているのに、株価が10円を超えているというのは、まさにこの節税方法のために買っている人がいるからだろう。
さらに、証券会社によっては、この節税方法を推奨しているかのように、株券の受け渡しをせずに出庫と入庫を同時に事務上の手続きだけで済ませているところもあるようだ。

いま買った株式を、買付日や買付価額が明確であるにもかかわらず、事務上の処理だけで、タンス株券としてみなし取得価額を取得費に書き換えるわけだ。
こんな方法を認めていいのだろうかと思い、国税局に問い合わせたところ、税法上は違法というわけではないので、認めざるを得ないとのことだった。

救済措置的に作られた制度を逆手に取るような方法なので、個人的にはあまりおすすめしないが、利用すればたしかに上場株式等の譲渡益課税を大幅に節約できる。利用しない手はないのかもしれない。

ただし、確定申告の際に税務署で否認される可能性がないわけではないので、利用する場合は「ダメもと」くらいの感覚でいたほうがいいだろう。


(2003年9月3日)

※株式分割を計算に入れていなかったため、株価を修正しました。
(2003年9月29日)


ここに記載された内容は、あくまでも筆者の個人的な見解です。投資に関する最終的な判断は自己責任のもとにご自身でなさってください。万一、内容についての誤りや内容に基づく損害を被っても、筆者は一切責任を負いかねます。



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