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その6

さよなら、郵貯の裏ワザ


郵貯の裏ワザというと、7年くらい前からマネー雑誌などのさまざまな媒体を通じて対象商品と利用法の解説が紹介されていたものである。実際に多くの人が利用しているはずだ。

対象商品は郵便局の「ニュー定期」。銀行などのスーパー定期と非常によく似た商品であるが、裏ワザの利用法は、最低利用単位である1000円で「1ヵ月もの」を「自動継続」するという方法。現在のニュー定期1ヵ月ものの適用金利は年0.02%なので、1000円に対して1ヵ月でつく利息は0.01666…円(=1000円×0.02%÷12)。
ここで郵便貯金の利子の端数計算は、「利子が1円以上のときは1円未満の端数を切り捨て。ただし、利子の全額が1銭以上1円未満のときは、1円に切り上げ」という決まりに従って行われるため、1000円に対して1ヵ月で1円の利息がつくことになる(1円の利子に対する20%源泉分離課税は、1円未満になるので切り捨て)。

つまり、これを自動継続することで、1年で12円の利息となり、1000円に対しては年1.2%の手取利回りが得られるわけだ。表面利率は0.02%でも実質的には1.2%。昨今の金利水準からすると非常に魅力的である。

以前、ニュー定期は口数を分けて預け入れることが可能だったので、100万円の場合は、1口100万円とするのではなく、1口1000円で1000口とすることができた。利息や税金の計算は1口単位で行われるため、このように1口を小さくすることで全額を手取り1.2%の運用にできたのだ。

さらに中途解約の場合で1銭以上の利息がついていれば1円に切り上げられていたとき(平成10年4月まで)には、預け入れから4日で解約して1円の利息が得られたので、4日ごとに預入・解約を繰り返すツワモノまでいたようだ。

このような裏ワザの利用に対し、郵政のほうもこれまでさまざまな対抗措置をとってきた。平成10年5月から中途解約時の利息を10銭未満切り捨てとすることで「郵貯転がし」とも言われた短期の預入・解約の繰り返しを阻止し、平成11年1月からは口数分けを禁じ、平成16年1月からはATMでのニュー定期1ヵ月ものの利用を不可としたのだ。

とはいえ、以前から自動継続にしているものは手取り1.2%が続いているし、現在でも窓口で1000円ずつ預け入れれば裏ワザの効果が得られる。また、定額貯金(6ヵ月以降自由満期)では口数分けが依然として可能なので、定額貯金を1口1000円として預け入れ、半年ごとに解約すれば年間2円つまり手取り0.2%(適用金利の10倍!)の利回りは確保できる。ニュー定期の裏ワザに比べれば利回りは6分の1だが、窓口で1000円ずつ預け入れる手間を考えると、定額貯金のほうが気軽にできる小ワザかもしれない。

ところが、ついにこれらの裏ワザを完全に利用できなくする抜本的な措置、すなわち郵便貯金の利子の端数計算の方法が変更されることになった。
現在の端数計算の方法がとられるのは平成17年3月末までで、4月からは「利子の1円未満の端数は切り捨て。ただし、合併預入(○○○円×○口)の郵便貯金を同時に払い戻すときには、口数倍後の利子の1円未満の端数を切り捨て」となる。これは、平成17年4月以降に払戻し又は自動継続をする貯金の全て(平成17年3月末までに預け入れたものも含む)が対象だ。

つまり、満期時に1銭以上1円未満の利息がついていた場合、これまで1円に切り上げられたものが切り捨てに変更されるため、利息は0円になる。適用金利や預入額によっては、手取り1.2%から一転して利回りが0%になる可能性があるわけだ。
以前口数分けをしていた人は、口数倍後の預入合計額に利息がつくことになるが、口数分けが不可になってから窓口やATMを通じて1000円ずつ預け入れたものは、適用金利が1.2%以上になってはじめて1000円に対して1ヵ月で1円以上の利息がつくようになるので、そこまで金利が上昇しない限り利回り0%が続くことになってしまう。「おトクな裏ワザ」から一気に「もったいない利用法」に変わってしまう感じだ。

ただ、利息計算の方法が民間の銀行などと同様になるというだけなので、1000円ずつ預け入れていた人は、金額をまとめて預け入れ直せば、利回りは0%にはならない(ニュー定期1ヵ月もの適用金利年0.02%の場合、元金が6万円以上なら1ヵ月で1円以上の利息がつく)。裏ワザの利用者については、各自が預け入れの状況を確認のうえ、金額をまとめるか、別の預け入れ先を探すかの手立てが必要になるだろう。

新聞報道によれば、裏ワザなどの利用による郵便貯金の利子の過払いは年間700億円にも達しているようだ。本来0.02%の利払いなのに、1.2%を支払っていたとすると、過払いは1.18%。それが700億円にもなるということは、単純計算でも元本部分は約6兆円になる。すべての郵便貯金の残高約220兆円に比べれば少額だが、裏ワザに充てられていた資金は、すぐに遣う予定のお金ではなく、安全性を重視しつつも有利に運用したいという性格を持っていると予想できる。
だとすると、来年4月(奇しくもペイオフの完全解禁と同時期だが)には、この約6兆円のお金が安全かつ有利な商品を求めて、郵便貯金から流出するのかもしれない。


(2004年11月7日)


ここに記載された内容は、あくまでも筆者の個人的な見解です。投資に関する最終的な判断は自己責任のもとにご自身でなさってください。万一、内容についての誤りや内容に基づく損害を被っても、筆者は一切責任を負いかねます。



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